子どもが豊かに自由に生き生きと育つことは、
先に生まれた大人の責任
CAPNAが発足したころ、私は精神科ソーシャルワーカー(現在は精神保健福祉士)として精神病院で働き、アルコール依存症と診断された女性たちと関わっていました。なかには幼い子どもを抱えている人もいました。母親が連続飲酒状態になると子どもに目が向きません。つまりネグレクトです。時には暴力もあります。母親が入院し、子どもは児童養護施設に保護されました。面会に同行した際、幼い子どもが母親に会うことを拒否しました。この母親は自らも家庭崩壊の体験者でした。悲しみに打ちひしがれた母親の姿を昨日のことのように覚えています。
CAPNAのなかで私は育児不安を抱える母親の支援を行ってきました。1996年から約20年間、育児不安や子どもへの虐待で悩む母親のグループ支援を、2006年からは暴力から逃れてきた母子が入居するシェルターを担当してきました。グループで出会った母親たちの多くは、自らも被虐待児であった体験を持っていました。虐待を受けてきたこころの痛みや辛さは大人になってもなかなか解消しないのです。子どもへの虐待は、子どもの人生に深い後遺症をもたらします。そして自ら子育てをするとき子どもへの関わり方がわからず、時に虐待をしてしまうことがあるのです。
子どもへの虐待を防止する活動は、子どもの未来を豊かにする活動です。子どもが豊かに自由に生き生きと育つことは、先に生まれた大人の責任です。さらなる皆様のご協力とご支援を心からお願いいたします。
特定非営利活動法人CAPNA理事長
小久保 裕美